こえだめブログ

人生迷走記。改め、ぼうけんのしょ。

元美大生自称画家、底辺男の愚にも付かない戯言が
いつか何かの肥やしになったら良いなという思いのもと
日々のよしなしごとをネットに垂れ流しています。

前回はこちら こぼれ話03はこちら 写真はクリックで拡大表示されます
あらすじ:千葉県を徒歩で一周する34歳の無職。茨城県から再度千葉県入りしたところで凍えていた。
早くも限界に近い状態の男は、成田で装備の見直しを決意した。
これまでの経過:葛飾区⇒柏⇒我孫子⇒藝大キャンパス⇒牛久大仏⇒長豊橋河川敷


 10月12日、寒い、眠れない。携帯食を多めに頬張り、出来るだけエネルギーを蓄えて、朝6時に出発した。相変わらず空は暗く、気温は上がらない。しかも雨の影響でじめじめしていて、上手く体温が調節できない。動けば暑く、止まればすぐに体が冷える。あと1週間はこのような天気らしい、どうしようもない。


IMG_1831(1)
雨と曇りの繰り返し。奇跡的にコンビニに避難できた。

 昨日あたりから、足に違和感を感じている。かなりのダメージがかかっていると思われた、濡れた靴が締め付けるせいか、非常に痛い。コンビニのトイレの中で、意を決して今晩はホテルをとることにした。携帯を取り出し、成田駅近くで格安で、とりあえずベッドで眠れそうな場所を探した。服もいい加減に洗剤で洗わないとヤバい。取り敢えず今までの疲労を一旦リセットしないと歩けなさそうだった。
 予約サイトを見ると内装が綺麗なゲストハウスがオススメの中にあった。旅人の直観が反応した。「ここはたぶん、僕みたいな奴でも受け入れてくれる気がする」早速予約のメールをした。最近のコンビニは携帯を充電できるイートインがある店があって助かる。

 食事をとって、また歩き出した。取り敢えず量販店が閉店する前に着かなくてはいけない。買い出しが出来なくなると厄介だ。続きを読む

 牛久大仏から稲敷市の国道406号線を南下し、千葉県へ戻る途中の話。

IMG_1784
午後の22時も回った頃。辺りはすっかり暗くなり、街灯のない道を歩いていた。

 場所の詳細は控えるが、暗闇の中に大きな影を見つけた。遊園地の遊具のようなオブジェ。トラス鉄骨の先にロケットのような形をしたものが取り付けられている。5mくらいの高さはあるだろうか。暗くて、かすかにシルエットしか見えないが、敷地内にそんなオブジェがたくさん置かれていて、彫刻家のアトリエのように感じた。

 こんな場所にアトリエを構えるのか。まぁ、都心まで近いし、土地も安そうだし、実はかなり穴場なのではないだろうか。もし自分がアトリエを構えるのなら、こういった場所も全然ありだな。そう思いながら通り過ぎようとしていた。

 ふと、ガレージの扉に続く側道の脇に、人影のようなものが見えた。身長は130㎝くらい。小学校高学年ぐらいの見た目だが、よく見ると顔はオジサンのようだった。ソレが僕のやや斜め後方を見ているように立っている。

 「なんだアレ」

 少し身構える。こんな夜中に、街灯の無い国道の脇で灯りも持たずに何をやっているのか。一歩一歩近付いてみる。少しこっち側を向いているソレは、近づいても警戒する素振りすら見せない。全く動かないで、ただ僕の来た道のはるか後方を見ていた。

 ちょっと足が竦んだ。「変な人だったらどうしよう」そう考えていた。大人にしても子供にしても少しプロポーションがおかしい。何か嫌な予感がする。しかし、相手まで5mくらい、だいぶ近付いたが、呼吸音すら聞こえない。何だコイツ。

 恐る恐る距離を詰めていくにしたがって、ついに正体が分かった。どうやら人形だった。グリーンアーミーのような、サングラスをかけ、迷彩服のようなものを着た人形だった。

 「なんだ、人形か」

 暗がりで、近づいてもよく見えなかったが、確かにビニールかFRPか、とにかく単一の素材で作られた人形だ。防犯のために置いているのかもしれない。まあ良かった。

 「驚かされたついでに、一枚撮るか」

 パシャ
 
 フラッシュが人形を照らし、

 戦慄した。

 暗くて見えなかったから、1つの素材で出来たマネキンのようなものだと思っていたが。

続きを読む

前回はこちら こぼれ話02はこちら 写真はクリックで拡大表示されます
あらすじ:34歳無職が千葉県を徒歩で一周することにし、茨城県龍ヶ崎市に着いた。昨日、藝大取手キャンパスをチラ見して癒されたこのバカな男は、今度は「牛久大仏に行く!」と言い出した。
これまでの経過:葛飾区⇒柏⇒我孫子⇒茨城県取手市⇒藝大キャンパス⇒龍ヶ崎市



 竜ヶ崎駅はターミナル駅で、車庫に止まっている電車が間近で見られる。電車好きには嬉しい場所だろう。カラーリングがちょっと可愛かった。ふと運賃表に目をやった。驚くなかれ、葛飾区の金町駅から800円で来ることが出来てしまう。ここに住んで東京で働くなんて余裕で出来る。「何という事か、人間の社会はここまで文明に依存しているのだ。徒歩圏内で生きろ」勝手な事を心の中で叫ぶ。

IMG_1612(1)
可愛い絵柄の車両。“まいりゅう”君と言うらしい。

 4日目の10月11日。出発したのは5時40分ごろだった。仮眠もそこそこに、さっさと歩きだした。どこに居ても雨のせいで寒いからだ。動いていた方がまだ体に良い気がした。

IMG_1624(1)
通りに所々竜を象った彫刻が置かれている。さすがヶ崎市。

 薄明かりの中、小雨が降っている。牛久大仏までは地図で12㎞くらいだった。少し入り組んだ道を歩き続けることになるが、昼ごろまでにはたどり着けるだろうと思っていた。


IMG_1630
僕が好きな映画で見た風景に似ている場所を見つけた。もしかしたらロケ地かもしれない。見た記憶がある。主役の女性を助けるために、良い年したパンクロッカーが運転するダンプがこんな道を大量の土を抱えて通るのだ。




続きを読む

 藝大から牛久大仏へ向かう途中の野営の話。

 利根町の公園で野営を試みようとした直後に雨に降られ、ビバークを解除してひたすら歩いた。歩いている道の名はだんご塚通りと言うのだが、洒落た名前のワリには小ざっぱりとした、ただの真っ直ぐな県道だ。
 夜中23時、荷物が肩に食い込み痛い。靴が濡れている。カツカツと昨日作った竹の杖を支えにして、濡れた道を歩いた。どこかで眠りたい。この際、屋根があれば何でもいい。
 途中、ドライブスルーの店舗を見つけた。まあ、中に侵入したら犯罪なのだろうけど、屋根になっている部分で雨宿りする分にはいいだろう。荷物を降ろして座る。
 バックから、食べ物を出す。とにかく荷物の重量を減らすために、ドライフルーツや煮干しなど、乾燥食品を多めに入れてある。水は途中で購入する。これが僕のスタイル。疲れているのか、食べる量が多い。

 「このまま、眠ってしまおうか」そう考えたときだった、今度は風が吹き出した。

 ドライブスルーの雨よけなんてたかが知れていて、少し横殴りになった雨はあっという間に僕の顔を濡らした。ここでは眠ることは出来なさそうだ。そう思ってそそくさと退散する。この先に雨よけなんてあるのか。まぁ、無くても何とか先に進まないといけない。

 いよいよ何もなくなった。周囲1㎞くらい、見通しは良いが民家なんてものはない。ひたすら田圃道。働いていた時、絶望を感じたことがある。絶望すると人の視界は本当に真っ暗になる。あれは比喩表現じゃない。疲労と言うより、味方がいない、寄る辺が無いということがどれだけ心理的にダメージを与えるか分かっていた。そんな感覚にちょっと近いかもしれない。その時ほどではないが、確実に絶望しかかっていた。

 とにかく歩いた。日本全国、まあ道を歩けば町に当たる。それだけを支えに歩いた。しばらくして構造物が見えた。人の気配はないが、歩道橋だった。何もない県道のど真ん中に歩道橋が架かっていた

 どこかで見たことがある歩道橋だった。昔、友人の課題制作で見た歩道橋に似ていた。幅も大きめでわずかだが、雨に当たらないところもある。支柱の枕石の上は横にはなれないが、座るくらいなら丁度よく、眠りにつくには何とか用を成しそうであった。

 僕は周りに生えた草を押しのけて、虫が這い上がって来ないようにし、そこに腰かけて眠った。冷えた枕石でお尻は冷たいし、少しだけ霧状の雨粒が吹き付けてくるが、そんなことはもうどうでもいいくらいに精魂尽きていた。
 午前2時。2回目のビバークはちょっとだけ上手くいった。意識がなくなるほど深くは眠れなかったけれど、4時ごろには少し回復している自分が居た。

 竜ヶ崎駅まであと3㎞。取り敢えず市街地を目指した。

前回はこちら こぼれ話はこちら 写真はクリックで拡大表示されます
あらすじ:34歳無職、能無し男が千葉県を一周することにした。しかし2日目にしてネカフェの快適さにハマってしまい一回休み。誘惑を振り切って利根川の畔に着いた。取手市がすぐそこという理由だけで茨城県入りし、藝大のキャンパスに行くことを試みていた。
これまでの経過:葛飾区⇒松戸⇒流山⇒柏⇒我孫子⇒我孫子(2日目)⇒我孫子(利根川)

IMG_1445
大利根橋の上から、茨城県方面を望む

IMG_1449(1)
茨城県。県のマークがなかなか良い。

 利根川はやはり川幅がとても広かった。川岸は入り組んでいて、木々が茂っており、なぜか草むらの中に軽自動車や小型船舶が係留してあった。程なくして取手市入りした。県境いを跨ぐとやはりテンションが上がる。これが国境だったらもっと上がるのかもしれない。
IMG_1457
取手駅前 曇り空の隙間から西日が射している

IMG_1460(1)
少し道が入り組んでいる。石垣と趣深いポストのある坂。

IMG_1469(1)
歴史の在りそうなお寺があった。旅の無事を祈っておくことにした。

IMG_1476
広い交差点。

 地図のイメージと実際の道の広さがなんとなく違う。利根川に続く用水路が多いことと、それに沿って道が曲がっているので、今いる場所が掴みづらい。もう秋分も過ぎているため、太陽の沈む時間が早い。初日から日没の時間はチェックしている、だいたい17時15分に日が沈む。

IMG_1483
大きなガスタンクがある田園、日が沈みかけている。

IMG_1487
ものの15分でこれである。金州城外、斜陽に立つ。

IMG_1494
道中見かけた謎の池。田んぼかもしれない。真ん中に神籬のようなものがある。


 日もだいぶ暮れてしまった頃、痛恨の道間違いをしていることに気付いた。不覚にも1時間以上、全く別方向に歩いていた。こういうことに気付くと、途端に肩に掛る荷物が重たく感じる。さてはて、どうしたものか。来た道を戻ると倍以上の時間がかかる。地図を開くとやや近道があった。ざっと40分ほどで正しい道に戻れそうだ。道に迷いかけている中、更に新しい道に行くことは少しリスクが高いが、やむを得ない。正しい道に出ると思われる道を歩いた。

IMG_1497
元のルートに続くと思われる道。街灯はなく交通量も人影もない。

IMG_1500
開墾した記念碑が立っていた。

IMG_1501
日が落ちていく。恐怖もあるが、光る雲はそれだけで美しかった。

 日没直後の薄明かりの中、ひたすらに歩いた。真っ暗になりつつある道に沿って、用水路が流れていた、その中では白い鷺が川底を啄んでいて、向こう側には大きな墓地があった。何時抜けるともわからない道を歩くことはとても不安を煽られる。半ば惰性で歩き続けるが、時間は刻々と過ぎて行く。急がなくては。

IMG_1510
漸く元の道に出た。もうかなり暗くなっている。時刻は17時25分。

 元の道に出たところで、空腹も限界に達し「次にコンビニでも見かけたら食事休憩をとろう」と思いながら歩いた。林の中の少し急な坂道を登っていると、歩道のど真ん中に秋田犬くらいの大きさの動物がぐったりと横たわっているのが見えた。もう少し気付くのが遅かったら踏んでいたかもしれない。全く動かないのでたぶん死んでいるのだろう。よく見ると狸だった。「デカくて毛並みもいいのに、轢かれでもしたか、憐れ」と通り過ぎたらいきなり大きな声がした「キュオォオッ!」びっくりして振り向くともう居なかった。あとで調べたところ、狸は人を騙すために死んだふりをするらしい。人を化かすことの由来だ。なるほどね、かなり印象に残った、覚えておこう。


続きを読む

↑このページのトップヘ